反AIの誹謗中傷やデマ拡散はなぜ起きる?事例から学ぶ原因とAIとの向き合い方

反AIによる誹謗中傷という言葉を目にして、なぜそこまで過激化するのか疑問に感じていませんか?この記事では反AIによる誹謗中傷の現状や実際に起きた事件、感情的な対立が生まれる背景を詳しく解説します。
- 反AIによる誹謗中傷が社会問題化している現状
- 実際に起きた誹謗中傷の具体的な事件や逮捕事例
- 感情的な対立が生まれる背景にある心理や誤解
- 今後のAI技術と建設的に向き合うための視点
過熱する反AI 誹謗中傷問題の現状

反AIによる誹謗中傷が問題視されている背景について、以下の内容を解説します。
- 生成AIを巡る対立構造
- 議論を超えた個人攻撃
- 社会問題化する実態
生成AIを巡る対立構造
生成AIの急速な普及は社会に大きな変化をもたらす一方で、新たな対立を生んでいます。中でも多く議題に上がっているのは、AIが学習するデータに関する考え方の違いです。
「反AI」と呼ばれる立場の人々は、インターネット上のイラストや文章などを作者の許可なくAIの学習に利用することを「無断学習」と捉え、クリエイターの権利を侵害する行為だと主張しています。
これに対し、AI開発者や利用を推進する立場の人々は、AIは新しい表現を生み出すための道具であり、現在の日本の法律では学習データの利用は原則として認められている、という見解を示します。根本的な認識の違いが、両者の間に深い溝を生んでいるのです。
議論を超えた個人攻撃

生成AIに関する対立は健全な議論の範囲を逸脱し、個人への誹謗中傷に発展するケースも多くあります。AIを利用して作品を公開したクリエイターや企業に対し「泥棒」「ゴミ」「文化を壊すな」といった侮辱的な言葉が投げつけられる事態が起きています。
これらの誹謗中傷は相手の人格を否定し、創作活動を妨害するものです。インターネットの匿名性を盾に、感情的な言葉で個人を攻撃する行為は、表現の自由を侵害します。
建設的な対話の機会もなくなり、問題解決を遠ざけてしまう一因となっています。
社会問題化する実態
反AIによる過激な言動はネット上の口論にとどまらず、現実社会に影響を及ぼす社会問題となっています。AI関連のイベントに対して殺害予告や放火予告が行われたり、嫌がらせ目的で警察へ虚偽の通報がされたりする事件が発生しました。
企業や地方自治体が広報活動に生成AIを利用したところ、脅迫的なメッセージが大量に送りつけられ、企画の中止やアカウントの休止に追い込まれる事例も報告されています。
こうした行為は、企業の正当な活動を妨害するだけでなく、社会全体を萎縮させる深刻な問題といえるでしょう。
反AIによる誹謗中傷の具体的な事件簿

ここからは社会的な注目を集めた誹謗中傷の具体的な事件をいくつか紹介します。
- クリエイターへの攻撃(イケハヤ氏の事例)
- 法的措置と逮捕事例
- AI魔女狩りの実態
クリエイターへの攻撃(イケハヤ氏の事例)
有名ブロガーのイケハヤ氏は、AI音楽事業を始めた際に一部から激しい誹謗中傷を受けました。その中心には、AIの「無断学習」に対する批判があります。反AIの立場からは「無断学習で作られたAIを使う者は泥棒だ」という論理で、イケハヤ氏個人への攻撃が行われました。
イケハヤ氏は日本の現行著作権法(第30条の4)ではAIの学習が原則として合法である点を指摘。AIを合法的に利用する個人を攻撃するのではなく、法律に問題があると思うのであれば、議員や団体を巻き込み法改正を目指す「政策提言」こそが建設的なアプローチだと主張しています。
個人への攻撃は、本来の目的であるクリエイターの権利保護から遠ざかるだけ、というのが彼の見解です。SNSでは単純な個人攻撃とも取れる発言が多く見受けられました。
» イケハヤ氏のnote「【炎上覚悟】「反AI(無断学習規制派)」に伝えたいこと。」(»サイト)
法的措置と逮捕事例

誹謗中傷や脅迫行為は、インターネット上の発言であっても許されるものではありません。実際に被害者が法的措置を取り、加害者の責任が問われるケースが出てきています。
特に象徴的なのが、京都市の車折神社がAI生成のイラストをSNSアイコンに使用したことに端を発する事件です。この件では神社に対して「全焼するぞ」といった脅迫メールを送信した男が、威力業務妨害などの疑いで逮捕されました。
警察は「京都アニメーションの放火事件を彷彿とさせる」とコメントしており、事の重大さがうかがえます。
» 京都新聞「メールで車折神社を脅迫、容疑で38歳無職男逮捕「生成AI絵師」で立腹」(外部サイト)
ゲームクリエイターの852話氏が受けた誹謗中傷に関する裁判では、被告が裁判所に出頭しないまま原告の勝訴が確定しました。これは、反AIによる誹謗中傷に対する国内初の判決とみられています。
事件概要 | 結果 | 特徴 |
車折神社脅迫事件 | 脅迫容疑で逮捕者が出る | 実在の施設への放火予告という悪質性からメディアでも大きく報道 |
852話氏への誹謗中傷 | 裁判で原告が勝訴 | 反AIによる誹謗中傷に対する国内初の司法判断 |
ナウル政府観光局への攻撃 | 法的措置を検討と発表 | X(旧Twitter)の公式機能を規約通り利用したにもかかわらず炎上 |
反AIが起こした事件に関しては以下の記事でも解説しているので興味のある方は覗いてみてください。
» 反AIの歴史から学ぶAI時代の向き合い方|過激化する言動の背景とは
AI魔女狩りの実態
「AI魔女狩り」とは手描きで制作されたイラストを、AIが生成したものではないかと決めつけて攻撃する行為を指します。この問題が広く知られるきっかけとなったのが、著名イラストレーターのあらいずみるい氏の事例です。
あらいずみるい氏が公開した手描きのイラストに対し、一部のユーザーが「AIで生成したに違いない」と断定し、誹謗中傷を行いました。あらいずみるい氏が制作過程のレイヤーデータを動画で公開し、手描きであることを証明した後も攻撃は続きました。
証拠を提示しても攻撃をやめない様子が、中世の魔女裁判と酷似していることから「AI魔女狩り」と呼ばれるようになりました。創作者にとって大きな精神的負担となり、創作意欲を削ぐ深刻な問題です。
» 反AIの魔女狩りはなぜ起こる?背景にある嫉妬と暴走の心理
なぜ感情的な誹謗中傷に発展するのか

過激な言動の背景には、技術への不安や誤解といった感情が隠れています。なぜ単なる批判ではなく感情的な誹謗中傷へと発展するのか、その原因について以下の内容を解説します。
- 仕事を奪われる不安感
- 技術への誤解とデマ
- 建設的でない活動の問題点
仕事を奪われる不安感
感情的な誹謗中傷の根底には「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安があります。長年の努力で技術を磨いてきた手描きのイラストレーターにとって、AIの進化は自身の存在価値を脅かすものなのです。
AIを使えば、専門的な知識がなくても短時間で一定品質のイラストを生成できてしまいます。クライアントがコストやスピードを重視してAIを選ぶようになれば、人間のクリエイターの仕事が減ってしまうかもしれません。
生活に直結する切実な不安が、AI技術そのものへの恐怖や、AIを利用する人々への攻撃的な感情につながっていると考えられます。
技術への誤解とデマ

AI技術に対する知識が不足していることも、感情的な対立を生み出す要因です。AIがどのように画像を生成するのか、現在の法律を正しく理解しないまま、反AIの人は断片的な情報やデマを信じてしまうことがあります。
音声合成ソフトを巡る炎上では、架空の設定だった「甥の声」という言葉だけが独り歩きし「実在の子供を騙して音声を収録し、無断で販売している」といった事実無根のデマにまで発展しました。
一度拡散されたデマは訂正が難しく、人々の不安を煽り、冷静な判断を妨げてしまいます。
建設的でない活動の問題点
本来の目的がクリエイターの権利保護であったとしても、その手段が誹謗中傷や脅迫といった形になることは大問題です。AIを合法的に利用している個人や企業を攻撃しても、法律や社会の仕組みは変わりません。
むしろ、過激な言動は社会からの共感を失い、反AI全体のイメージを悪化させます。「反AIは過激で話が通じない」という印象が広まれば、本来耳を傾けるべき正当な意見まで届かなくなってしまいます。
本当に現状を変えたいのであれば、感情的な攻撃ではなく、法改正を働きかけるなどの建設的なアプローチが不可欠です。
AIを学ばないとやばい理由3選

AIの登場は説明するまでもなく「時代の転換期」であると言えます。AIが本格的に人間の知能を越える前に、AIを使いこなす知識を身に付けておく必要があるのです。
今後AIを学ばないとやばい理由は以下のとおりです。
- 仕事を奪われる
- 格差が広がる
- 思考停止してしまう
仕事が奪われる
「AIの進化によって多くの仕事が奪われる」といった話は聞いたことがあるかもしれません。しかし、大半の人は「自分には関係ない」と楽観的に考えていることでしょう。
- 仕事を奪われるのはパソコンの前に座っている人だけ
- 俺は現場に出て働いているから関係ない
- AIと言っても動画や画像が作れるだけでしょ?
こういった考え方はあなたのクビを静かに締め上げています。
近い将来、企業の事務作業はAIが代替し、大幅な効率化が実現します。経営者は次に「AI導入で浮いたコストで、さらに会社の利益を上げるにはどうすればいいか?」と考えるはずです。
その答えは「成果の出さない社員のリストラ」です。「コスト削減」という大義名分のもと、会社全体で「本当に必要な人材」の選別が始まります。
つまり、リストラされるのは単純にやる気のない人です。事務作業がなくなったからといって、事務担当者がそのまま切られるわけではありません。
そうなってからやる気を出してももう遅いのです。
情報格差が広がる

「情報格差=資産格差」と考えてください。これからの時代はAIを使って大量の情報にアクセスし、適切に使いこなせる人間だけが富を得ることができます。
AIを使う人と使わない人とでは、勉強や仕事において取り返せない格差が広がるのは当たり前になります。
AIを使いこなす起業家は市場のニーズを瞬時に分析し、コストを極限まで抑えたサービスで、古い企業から顧客と利益を根こそぎ奪っていく。
AIを使いこなす同僚はあなたが1週間かける仕事を半日で終わらせ、その差は給料と昇進となって明確に現れる。
AIを学んだ人は仕事を効率的に進めて、普通の人の倍のスピードで仕事を終わらせます。これではAIによる格差が広がるのは当然ですよね。
問題は「自分はどちら側に立つか」です。
思考停止してしまう
AIを普段から使っていない人は、思考停止でAIの言うことを鵜呑みにするようになります。単純に頭を使わなくなるだけではなく、情報の真偽も見抜けなくなるということです。
AIは「それっぽい情報」を出力するのが得意です。最近は情報の精度も高まってきていますが、それでもまだ完璧ではありません。
普段からAIを使っていない人は情報の真偽を判断できないため、AIから出力される情報を信じることしかできません。AIが作り出した情報を真実だと思い込んでしまうと、気付かないうちに間違った方向に進んでしまうこともあり得ます。
AIに普段から触れている人はAIに答えを求めるような使い方はしません。自分の考えを深めるためのツールとしてAIを使っているのです。
つまりAIを使う人はより思考が深まり、AIを使わない人はより思考が浅くなるということです。こんなところにも格差が生まれてしまうんです。
大切なのは今のうちからAIを使いこなせる人材を目指すことです。
AIとの向き合い方

これからの時代に求められるAIとの建設的な向き合い方について、以下の内容を解説します。
- AIは敵ではなく道具
- 日本の著作権法の現状
- 求められる建設的な議論
AIは敵ではなく道具
AIを無条件に敵視するのではなく、新しい「道具」として捉える視点が重要です。写真技術が登場したときに画家という職業がなくならなかったように、AIが普及しても人間の創造性が持つ価値が失われるわけではありません。
現在のAIは独創的なアイデアをゼロから生み出したり、人間の細やかな感情を表現したりすることは苦手です。クリエイターはAIを補助的に活用することで、作業を効率化し、より高度な表現に挑戦できます。
AIを使うか使わないか、どのように使うかを判断するのは最終的には人間です。正しく使いこなすことで創作活動や普段の仕事において、莫大なメリットを得られることは間違いありません。
日本の著作権法の現状

AIと著作権の問題を考えるうえで、現在の法律を知ることは不可欠です。日本の著作権法第30条の4を見てみましょう。
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
〜中略〜
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
AI開発のためのデータ学習は「情報解析」にあたると解釈されており、原則として合法とされています。AIを使って特定のキャラクターそっくりの画像を生成するなど、著作権を侵害するような使い方をすれば違法になります。
学習行為そのものが直ちに違法となるわけではない、というのが現在の法的な考えです。
求められる建設的な議論
誹謗中傷からは何も生まれません。AI技術の進歩が社会に与える影響について、クリエイターや開発者、法律家、そして一般の利用者も交えた、冷静で建設的な議論が求められています。
AIの学習データに自分の作品が使われることへの対価をどう確保するか、AI生成物であることを示す表示をどう義務付けるかなど、具体的なルール作りが必要です。
AI技術の恩恵を社会全体で享受しつつ、クリエイターの権利もしっかりと守る。そのバランスの取れた未来を目指すためには、互いの立場を尊重し、対話を続ける努力が不可欠といえるでしょう。
まとめ

本記事では、反AIによる誹謗中傷の現状、具体的な事件、そしてその背景にある原因について解説しました。この記事の重要なポイントは以下のとおりです。
- 反AIによる誹謗中傷は社会問題に発展している
- 背景にはクリエイターの不安や技術への誤解がある
- 個人攻撃ではなく建設的な議論で共存を目指すべき
- AIを正しく理解し道具として活用する視点が重要